チューリップとゼムナチュ

いつもは無表情でぼんやりとしたご主人さまが、眉をしかめてゼムナチュの側にやってきました。

ゼムナチュは「遊んで」のジャンプをしてみせました。

頭の悪いゼムナチュの、唯一出来る技なのです。

しかし、ご主人さまは、ゼムナチュを誉めてくれるどころか、沈んだ口調でくどくどと注意を始めました。

ゼムナチュはなぜ自分が怒られているのか、あまりよくわかりませんでした。

でも、とっても悲しくなりました。

チューリップとゼムナチュ

中庭では、ＫＨセフィロスが、遊びに来ていた子犬のクラと、ボールとりをして遊んでいました。

当然のように告げ口をするワンラグナ。

ＫＨセフィロスも、ほとほとゼムナチュの粗相には困惑しているのです。

チューリップとゼムナチュ

ゼムナチュがとんでもない場所にオシッコをしている様を、ワンラグナが見つけました。

すぐに注意すればよいものの、ワンラグナは、ゼムナチュのことが嫌いなため、わざとセフィロスに告げ口をするつもりなのです。

チューリップとゼムナチュ

ＫＨセフィロス宅の花壇にとても美しいお花が咲きました。

大切に精魂込めて育てたチューリップです。

パステルカラーのピンクとブルーが、お庭を彩ります。

……しかし、その調和を壊すが如く粗相の後が……

ゼムナチュは、まだまだ赤ちゃんワンコなので、どこでおトイレをしていいのか、わかっていないのです。

いつも、「したいな」と思うと、その場所でしてしまいます。

何度注意されても、すぐに忘れてしまう、頭の良くない赤ちゃんワンコなのでした。

がんばれ、ゼムナチュ！！

いつもは赤ちゃんワンコに構ってばかりのＫＨセフィロスでしたが、今日はゼムナチュといっぱいいっぱい遊んであげます。

ゼムナチュは「しあわせだ」と思いました。

そしておもらしも減らそうと考えました。

ゼムナチュは、ずっとずっとこの時間が続けばいいなと思いました。

がんばれ、ゼムナチュ！！

翌朝……

アライグマはワンレオンがしっかりとおっぱらいました。お庭は無事です。

ワンレオンは、今朝のウチに、ＫＨセフィロスにゼムナチュのがんばりをお話ししたのでしょう。

傷だらけでばっちくなったゼムナチュに、ＫＨセフィロスがやさしい言葉を掛けました。

ゼムナチュはとっても嬉しく思いました。

ワンラグナは、「うぜェ」と思いました。

がんばれ、ゼムナチュ！！

勝負はあっという間についてしまいました。

いくら頑張っても、やはりゼムナチュは運動神経の良くない、身体の重い赤ちゃんワンコなのです。

アライグマに踏みつけられ、ペットリと仰向けに転がされてしまいました。

しかし……！！

ゼムナチュの奮闘のおかげで、ＫＨセフィロス宅の動物たちがすでに周囲を取り囲んでいるのです。

最も勇敢なワンレオンが後を引き受けたとばかりに、アライグマを引きつけました。

がんばれ、ゼムナチュ！！

アライグマがゼムナチュに飛びかかり、二匹は転倒して激しいもみ合いになりました。

その声を聞きつけ、眠っていたワンレオン、ワンラグナ、ピュアちゃんもお庭に出てきました。

がんばれ、ゼムナチュ！！

その夜のことです……

おもらしをしたゼムナチュが、すごすごと自分の寝床に帰ろうとしたとき……不穏な気配があたりを取り巻きました。

真っ暗な中、瞳をこらして周囲を見つめると、ギラリと光、ふたつの目……

なんと巨大なアライグマがお家を狙っているではありませんか。

臆病者のゼムナチュはすぐに逃げようとしました。

しかし……今、おうちにはゼムナチュよりも小さな赤ちゃんワンコがいるのです。

ゼムナチュは渾身の力で吠え、アライグマに対峙しました。